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アカデミックラウンジ
介護保険の総括と今後の課題(1)

大阪市立大学大学院 生活科学研究科
教授 白澤 政和


−介護保険が始まって3年経ちましたが、総括してどのようにお考えですか。


 まず、「介護保険を始めて良かった」というのがベースにある。潜在化していた人たちがサービスを利用するようになったことは、意義が大きいし、また、一人当たりの利用量が増えた点でも良かったと思う。
 しかし、一方では、いくつか根本的な問題を抱えている。その一つは、在宅志向が進まなかったこと。(サービス利用者数の増加という点からみると)在宅志向にみえるが、人々の意識は施設に向いている。現に施設の待機者はずいぶん増えていて、これが一番の介護保険の問題である。これを解決しないと介護保険は順調に進んでいかないだろう。
 それと付随する問題として、在宅を進めるためにケアマネジャーの育成が、質的な面でうまくいかなかったことがある。

− 介護保険が抱える問題について教えてください。
 問題の一つは、在宅志向に向けてのサービスの量と質が整っていないこと。厚生省は第三領域といっているが、そういう意味では、在宅を支えるべくもっと多様な種類のサービスを準備していく必要がある。
 施設というのは、「居住機能」と「介護機能」ができるかぎり分化していくべきだと思う。今、特養では、両者の機能が一体化している。しかし、グループホームでは、居住機能は全額自己負担で、介護機能は介護保険でみている。新型特養も(ホテルコストを導入しており)同様だ。
 居住機能部分については、利用者の最低限の制度保障をしながら自己選択とし、介護機能部分は介護保険でまかなっていく。そうすると、グループホームや新型特養が在宅サービスに移っていくことを可能にする。そのため、今後は居住に焦点を当てた多様な在宅サービスを準備していく必要がある。
 グループホームについても、痴呆性の高齢者だけでなく、寝たきりの人たちを対象にしたものがあってもよい。あるいは、多様な小規模多機能施設みたいなものが必要だと思う。在宅志向にもっていくためには、このような新たなサービスをハード面でどう創りあげ、在宅支援のサポート役として役割を果たしていくか、ということが大きな課題である。

−今のグループホームや新型特養等でも、広い意味で従来型施設でなくて、在宅ということなのですね。私たちは施設の延長線上のように考えてしまうのですが・・・・。

つまり、施設と在宅のボーダーをあいまいにしていこう、ということ。

−それには、民間が参入しても良いとお考えですか。

  多様化のなかで、それはかまわないと思う。ただし、サービスの「質」の維持が問題になってくる。問題は、「だれが出資するか」よりも、「どうやって第三者評価をし、その結果についてどのように情報開示をしていくのか」という課題を実行していくことだ。
 そうなると、在宅は施設よりもクローズされていないから、評価しやすいかもしれない。そういう意味では、既存の施設が住宅に変わっていってもよいのではないかと考えている。スウェーデンのように。
 具体的には、特養の一部が在宅になってもよいのではないか。あるいは、利用者が社会復帰できない長期滞在型の老健施設であれば、在宅の住宅に移行していったらよいのではないか。
 ここでもう一度、在宅志向をどう制度化していくのかを根本から考え直さなければならない。

− では、もう一つの問題はどのようにお考えですか。

  二つめの課題は、そこでケアマネをどうかかわらせていくか、ということ。私からみると、今のケアマネは本当のケアマネージングをしていない。 ケアマネの仕事というのは、できるだけ長く在宅生活できるよう支援していくこと。だから、本来は介護保険サービスだけではなく、様々なサービスを使って支援していかなくてはならない。

(次号へ続く・・・)

●プロフィール● (敬称略)
白澤 政和(1949年1月 三重県生まれ)
大阪市立大学大学院生活科学研究科 教授

著書:「老人保健福祉計画実現へのアプローチ」、「ケア マネジメントの実際」、「ケアマネジメントハンドブック」、「海外と日本のケアマネジメント」ほか多数。

 

 

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