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在宅医療のあり方(第2回)

 医療法人社団よつば会
ケアタウン南草津 総長 大坪 勇 さん


−在宅サービスを展開にするためには、この施設をもっと大規模にすることも可能ではないですか?

 建物の大きさは、これが限界だと思っています。施設がこれ以上大きくなると、お年寄りが来にくくなります。「お年寄りが来られる規模」というのが絶対的に大切です。そのかわり、地域にこのような施設がいくつもあったほうがいいのです。

−国の言う「小規模多機能施設」のようですね。

  この施設は、国の考えでは大規模施設になりますが。もっとも、経営面からみると、この規模の効率が一番悪いのです。国が小規模施設を進めるとするならば、この点を見直さないと実際には進まないでしょう。
 もうひとつの視点として、現時点では小規模施設に医療面が欠けていることは致命的です。例えば、グループホームは、生活の場ということで在宅の延長として位置づけられています。しかし、高齢者のレベルは落ちていくのに、医療面のフォローがないのは問題です。特養のように設置基準も看護婦の配置基準もない。ですから、小規模多機能といいますが、医療の面がないと多機能にはならない。
 介護保険は、「健康」というベースからの発想でなく、福祉的、金銭的な援助論だけから考えると、それは大きな間違いだと思います。もちろん、経済的援助も大切ですが、それだけ用意すればよいものではない。そこの部分を我々が訴えていかないといけないのです。

−いろいろ議論されている介護保険の見直しによる影響はいかがですか?

  今後の見直しによって、要支援、要介護1の方たちを施設で受け入れられないとなると、この施設にとっては非常にマイナスに働きます。ここではユニットケアを実施していますので、今の施設の職員配置基準で維持していくことは、「幻」です。ユニットケアとは、利用者たちが自分たちのできることを開発していくことではじめて成立つのです。重度の方のケアはもちろん大切です。でも、今の日本の制度のなかで、要介護度が軽い方たちを放っておいて、重度の方だけのための施設をつくっていくのは、結果として寝たきりを次々とつくっていくことにならざるを得ないのです。施設は、いろんな人がいて、お互いが助け合っていく中で成り立っていくと思うのです。
  もうひとつの問題は、「定年」の問題です。「高齢者の定年を延長するのはよいことだ」というのは、違うと思います。もちろん、「働く」という前提は、よいことです。ただ、それまでの仕事の継続や延長ではなく、60歳で一度区切りをつけて、次に自分の本当にやりたいことをやっていくことを考えていかなくてはいけない。
 実際、私たちのような福祉施設では、経営者として、そして現場の介護者としてそういった人材を非常に欲しています。というのは、ここに入所している高齢者の言葉がわかるのは、まさにそういう年代の方たちなのです。それと同時に、その方たちにとっても、入所者と接するなかで、どういった生活を送ると脳梗塞や心筋梗塞などになるのか、などを認識する機会にもなります。自分も将来はこうなる可能性があるんだ、と。本当は40歳くらいから考えないといけないのですが、自分の老い先を考えるには、60歳が限界なのです。
  これらのことから、今の60歳以降の労働力を再構築、つまり、「リストラクチャー」していくことが重要であり、そういうリカレント教育をしていかなくてはならないと思います。また、お金をもらう以上はプロですから、彼らが必要な知識を自ら学んでいく土壌づくりを国がやっていかなくてはならない。そして、それは結果として年金問題などを解決していくキーワードにもなるはずです。

−確かに福祉は雇用の吸収の場と言われていますが、退職した人をあまり考えていないようですね。
  確かに介護は重労働な部分がありますから、高齢者がついて行かないというのかもしれない。でも、本当に高齢者がついていけないか、そこまでやったのか、そういった知恵を出したのか。ということです。
  機械化を進めることもある意味で必要です。これからの世の中、ロボットなども進化していきますから、それを活用していくことも当然必要です。そういう意味で、力仕事の部分はロボットにやってもらって、心のケアや肌に触るケアは人間がやらないといけない。特に、コミュニケーションというのは人間にしかできないのです。しかも、コミュニケーションとは「意思の疎通」ですから、利用者と近い年代の方が疎通しやすいのです。

(→次号へ続く)

●プロフィール● (敬称略)
医療法人社団よつば会 ケアタウン南草津
http://www.caretown.jp/
〒525-0066 草津市矢橋町621番地
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