私は、立命館大学の経済学部で、医療や介護の分野で「どうやって儲けるねん!」という講義をしています(笑)。
ニーズに応えることがビジネスを構築する大前提であるのに、若い彼らにはお年寄りのニーズがわからないのです。現在は、高齢者が増え、介護保険料があがり、若者たちの負担が増えている。ということは、高齢者は、若い年代にとっては生活をおびやかす大敵なのか、というとそうじゃない。大変な状況ではあります。でも、高齢者が増えているというのは、実はすごいマーケットが広がっていて、将来は非常に明るいということです。
ですから、まず、私が言うのは、「高齢者の心をつかむ商品を開発しなさい。これからの企業にとって、圧倒的多数を占めることになる高齢者をマーケットとしない企業はつぶれていく」ということです。
そうやって若い世代に、高齢者をビジネスチャンスとしてPRしていくためにも、高齢者にはキチンと経済活動をしていただきたいのです。そのためにも、60歳をすぎて、もう子どもの教育費も要らず、自分の生活のために100%
つかえるようになっても年金に頼るだけでなく、ご自分で稼いでいただきたい。そういう方たちが稼ぐ社会にしていかないと、若者の負担は増えるばかりです。
自ら稼ぐということは、非常に崇高なことです。実際、リタイヤしてしまって、何をやっていいのかわからない人が多い。その人たちが「必要なんだ」というものをつくっていく必要があります。特に、今までの延長ではなく、新たな発想で再チャレンジすることが大切です。
−この施設では、高齢者の再就職に積極的ですか?
ある程度のキャパシティは、十分にあります。退職された年代の方たちが再雇用されて介護技術を学べば、非常に大きな力になります。彼らは、お年寄りの心をつかむスピードが圧倒的に違います。
まず、何を大切にしないといけないかを知っているのです。例えば、高齢者の手を握って話せる、車イスに乗っている方に対してはしゃがんで話す、といったことを教えられなくても分かっています。そういった本当のコミュニケーション技術をすでに身につけているのです。
−マニュアルではないということですね。
この施設でもさまざまな年間の行事があり、職員は一生懸命やっています。でも、利用者の顔をみていると、うれしそうな顔をしている人ばかりではない。入所者、利用者それぞれが好きなことをやる、そのニーズをひきださないといけないと思います。それぞれの人がやりたいと思うことを企画しなかったということであれば、私たちはいかに声を聞いていないか、いかにコミュニケーションが欠けているか、ということなのです。
そこに60歳以降の方が入ってコミュニケーションをとってくれたら、入所者のニーズを集約でき、的確に応えていくサービスが提供できると思います。そうすると利用者の笑顔が増える。そして、笑顔が増えるということはお客さん、つまり利用者が増えることです。
今の介護保険の見直しは、経済的な面からだけで進められていますが、子どもたちにとって、じいちゃん、ばあちゃんたちが、「うっとうしい存在」であってはならないのです。だからこそ、じいちゃん、ばあちゃんは「マーケット」として輝いてもらわないといけないのです。(笑)
−サービスの質の向上についてお聞かせください。
私には、施設サービスで得た収益を職員に還元したいという思いがあります。それも、単にお金の還元はなく、「研修費」として還元したいのです。職員たちをヨーロッパに派遣して、向こうの国々の高齢者のケア、サービスを見てきてもらいたいのです。
ここはできたばかりの施設ですから、現在は院内研修を毎月やっている程度です。でも、それでは職員にはカルチャーショックにはなりえない。カルチャーショックを受けない限り、ふつふつとした「燃え上がるもの」はでてきません。そうすると、やっても、やっても先が見えず、そのままバーンアウト症候群になってしまうわけです。
申し訳ないけれど、「今年はだれも(研修には)出せないよ」とは言っています。でも、私は、職員にとってこの施設に勤めていることがステータスになるようにしたいのです。人に、「この施設に勤めているなんていいわね」と言われるような施設にしていきたいと思っているのです
−ありがとうございました。
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