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デンマークの保育事情


 北欧は、先進的な福祉でよく知られています。今回は、そのなかの一つ、デンマークの保育事情をご紹介します。デンマークは、人口約530万人、面積は約4.3万km2で、日本の九州とほぼ同じ大きさです。ユトランド半島と大小約500の島々からなり、南端はドイツと接しています。近年、スウェーデンとの間に大きな橋がかけられ陸続きとなりました。北欧4カ国のなかで一番小さな国ではありますが、国民の自国の経済、環境、福祉の政策に対する満足は高いといわれています。

 デンマークでは、一般的に、子どもは7歳になると国民学校に入学します。しかし、ほとんどの子どもは、その前の1年間を「幼稚園学級」(通称「0年生」)で過ごします。これは、義務教育ではありませんが、国民学校での学校生活に慣れるために教育省が設置した任意の制度です。無償であり、また学校入学の準備にもなることから、多くの子どもが通っています。この幼稚園学級の前段階にも、就学前の子どもたちのための様々な施設や制度があります。

 例えば、生後6ヶ月から2、3歳児までを対象とした乳幼児託児所や保育ママ制度(*1)、3歳〜5歳児を対象とした保育所、0歳から所によっては9歳までが対象の統合保育所などがあります。近年、統合保育所は、同じスタッフが継続して子どもを保育できるという点や親の送迎が一ヶ所ですむなどのメリットが評価されています。

 また、学校に入学してからは、授業が終わった後などに、余暇の家(*3)や学校内学童保育所(*4)などの就学児童対象の保育施設で、親が迎えに来るまでの時間を過ごします。このように、子どもたちは学校に入学するずっと以前から、友達を作ったり、遊びを通して様々なことを学んだりする機会が用意されているのです。

 子どものための保育制度が充実していることは、親たちが外で働いていることとも大きく関係しています。デンマークはヨーロッパの中でも最も女性の就業率が高い国のひとつとして知られており、0歳から10歳の子どもを持つ母親の約8割がフルタイムで働いています。母親が働く割合は、子どもの年齢が上がるとともに上昇し、パートタイムも合わせると、9割近くの母親が働いていることになります。

 しかし、単に働く親の育児を引き受けるためにこれらの通所保育施設が発達したわけではありません。デンマーク政府は1988年に、すべての子どもは教育的で良い刺激を受ける環境としての公的通所保育施設を使えるよう保証することを約束しました。つまり、子どもたちは、親の就労の有無や家族の状態に関わらず、様々な保育施設を利用することができるのです。また、親は、子育ての第一義的な役割を担う者とされ、子どもが通う全ての通所保育施設、学校には、親を中心とする「運営協議会」(*4)を設置しなくてはならないという法律も施行されています。この運営委員会は、各施設や学校のカリキュラムから、スタッフの雇用、運営費の使い方までを決定します。このように、保育施設、学校、親がそれぞれの役割を引き受け、保育施設や学校を利用する子どもたちの生活が充実したものになるよう、お互いに意見を出し合いつつ取り組んでいるのです。

<注>
(*1)保育ママ(家庭的保育):施設型保育の不足を補完することを目的としたサービスで、自宅で4〜5人までの子どもを保育します。保育者には特別な資格は必要ありませんが、決められた条件を満たす必要があります。現在は、施設型保育園にはない家庭的な環境を子どもに与えようと、保育ママを選ぶ親が増えています。

(*2)余暇の家;10〜14歳の子どもが、登録制で趣味活動を行う場所

(*3)学校内学童保育所;キッチンまでしつらえたスペースを確保しているところもあれば、空き教室を利用しているところもあります。スタッフは幼児教育の資格を必要とし、子ども一人ひとりの問題に対して、学校の教師と相談しあいながら対応します。常に学校と相互協力の体制がとられています。

(*4)デンマークの保育施設では、親の参加する運営協議会を持つことが義務付けられています。資金面の運用などに関して、親と保育者が対等の立場で話し合います。親は運営協議会に関わることを権利と思っており、発言をしないことはむしろ怠惰だと捉えています。

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