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成長から持続維持社会
(サスティナブル・ソサエティ − sustainable society −)へ
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わが国は、戦後のめざましい科学技術の進歩と経済発展を経て、世界一の長寿社会を築き上げました。しかし、果たして長寿が喜べる社会となり、精神的にも豊かな老後の暮らしが確保されているのでしょうか。
残念ながら「NO」といわざるを得ません。一見、生活が多様化し、物質的には何不自由なく、国民一人ひとりは、豊かな生活を楽しんでいるようです。しかし、本質は、「恒産なくして恒心なし」を支えに、西欧諸国に追いつけ追い越せと走り続け、坂を上りきった結果、目標を達成したかのように錯覚し、宴に走った挙句、「恒産減じて慌心生ず」の失意と混迷の現状に面しているのではないでしょうか。
今日では、利便さと物質的豊かさに裏づけされた消費社会が幸せを運んでくるという幻想ははじけ、物質的豊かさを求めた馬車馬のような生活から精神的なゆとりを求め、ゆったりした暮らしを楽しむサスティナブルな生活スタイルへの転換を余儀なくされているのです。
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成熟した生活(マチュア・ライフ − mature
life−) |
保健・医療・福祉をとってみてもわが国は、技術的なレベルやサービス給付水準は決して世界に劣るものではありません。しかし、暮らし向きの豊かさを考えたとき、満足度は低いのではないでしょうか。
先進諸外国を視察し、高齢者の質素ながらも豊かな暮らしに触れると、彼我の暮らしぶりの違いに大きな驚きを感じざるを得ません。年金額の多寡や社会保障制度の違いだけでなく、社会及び個人の成熟度の違いのようなものをいつも感じます。
わが国は物質的には豊かになり、先進諸国の仲間入りをしたかも知れませんが、高齢者さえも「老後」を心配するという、不安な状況にあります。
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アジェンダ・セッテイング(課題設定
−agenda setting −)とパートナーシップ |
今までのような右肩上がりの経済成長は望むべくもなく、長期デフレ傾向に移行した現在、税収が減り、記載の残高が増えた国・地方自治体、減収減益にある多くの民間企業、収入減やリストラにあった個人も含め、財政的な危機状態に陥っています。
政府は、行財政改革の旗印のもと地方分権を進め、国民的合意はともかく、自立・自助と自己責任を前面に打ち出し小さな政府をめざしており、国民一人ひとりが、「成熟した豊かな暮らし」と「地域住民と行政との協働」を大きな課題として切実に考え、共通認識し、行動する時期が来ているのではないでしょうか。
わたしどもは、暮らしと深いかかわりを持つ地方自治体の保健・医療・福祉分野を中心とした政策に関して、一民間企業の立場から、「成熟した社会、暮らしとは何か」を社是として問い続け、時には地を這う虫の目から、時には大空に羽ばたく鳥の目から、各種調査や行政計画の策定支援を通して様々な提言に努めております。
また、一方では、社会全体のアジェンダ・セッテイングを視野に、大学関係者との産学協同をもとに規制緩和にともなう民間活力の方向として、社会福祉法人の施設整備、民間事業者の福祉分野参入の支援、事業評価、高度情報化推進など他分野においても活動しています。
マチュールライフ研究所 代表取締役 今井久人
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