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民間サービス事業者は、今後も安定供給先として期待できるか
 
(H12.6.20更新)

 最近、全国展開している某社の訪問介護事業の規模縮小が、報道されている。
 某社の記者会見資料に寄れば、多くの広告宣伝費を使いブランドイメージを確立しようとしていたが、4月〜6月期で売上15億円、損失100億円と大赤字になっている。

 その主な原因として、「過疎地などの地方地域では社協などの公的セクターと地域の密着度が強く顧客が獲得できなかった」「身体介護での需要を多く見込んでいたが、現実には家事援助が多く収入見込が大きく狂った」と分析している。

 今後の具体的な対策として、@営業拠点を1,208ヶ所から顧客数2名以下の拠点を中心に731ヶ所に統廃合する、A現社員数を約4,400人から1,600人を対象に移動及び希望退職を募る、B全国を9分割にエリア分けし、東京や大阪など都市部を中心に事業部ごと運営の効率化を目指すとしている。

 他の同業他社も某社同様に収支見込みを下方修正し、新たな対応をとっているところが多く見られる。
 川でおぼれている犬に石を投げる気はさらさら無く、結果論で後講釈をたれるわけではないが、こんなことではと危惧していたことが少し早く現れてきたのではないだろうか。

 当社では、この3月まで地方にあるいくつかの自治体で「介護保険事業計画」の策定を支援してきた。ある自治体の報告書素案で、訪問介護の今後の方針について「民間事業者は採算性重視のため安定的な供給責任が薄く、あまり期待するのは危険である」という旨の記述をしたところ、県から「民間参入を促進する観点から具体的な記述を避けるように」という修正があり、その部分を削除したことがある。

 また、ある商工会議所主催の「介護ビジネスへの参入セミナー」で講師を務めたときも、「世間でいうような10兆円市場を安易に考えず、厳しい市場であるので覚悟して事業参入をしなくてはならない」と辛口の発言で警鐘を鳴らしてきた経緯がある。

 某社では当初思ったほど身体介護が少なく、家事援助が多かったことから採算見込が狂ったと分析している。しかし、介護保険以前でも多くの自治体では、家事援助での訪問がほとんどで、身体介護での訪問は30%程度であったのが現状である。しかも、そのほとんどが自己負担無料の人である。それを介護保険では身体介護が増えると考え、事業計画を甘く見積もり、介護ビジネスを全面に出し、市場から資金調達したのではないか。
 
 某社に寄れば、今回の方向転換は、事業縮小ではなくサービス提供体制の強化を図るものであると説明しているが、どう見ても事業縮小以外のなにものでもないと考える。

 軽々に批判すべきではないが、あまりにも介護をビジネス化したあげく、資金に裏付けられた安易なブランド戦略で手じまいを早くやるより、もっと地に足着いた地域密着型の事業展開を進め、利用者に不安をあたえることなく再出発を求めたい。


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