介護保険制度改革の方向
(2003.10.7更新)
去る9月14日・15日、岐阜市で開催された「在宅ケアを支える診療所全国ネットワーク」の全国大会において、8月まで厚生労働省の介護保険課長であった貝谷氏が介護保険制度の現状と見直しの方向に触れていたので、その概要を簡単にご紹介する。
介護保険制度全体について、これまで3年半について、どうであったか一言で言えば、「概ね順調であった」ということになるが、よく見ると一つ一つ問題がある。
まず、これまで3年間の全体の状況をみると、認定を受ける人が急増している。3年間で200万人が350万人と全体で60%増となっている。その中でも、要介護1が増えており、94%増と100万人を超えている。
今後は何が大変かといえば、財政が厳しくなってきており、このままでいくと制度を維持できなくなることになる。この春の保険料の引き上げ率は、全国平均で13%であったが、サービスは22%伸びている。毎年7%ぐらいの伸びで計算をしていたが、事態はもっと深刻で最近のサービスの伸びは、年間12〜13%、悪くても10%以上になる。新規認定者が増え、サービス量が増え、そのことは大変よいことだが、賄うお金の方が大変になってくる。3年間では、33%伸びることになる。
ところが保険料の算定上の増加は、22%しか見ていないので、このままで行くと第2期は大変厳しい状態になる。
その中でスクラップ・アンド・ビルド的な発想で負担を抑えながら、本当に必要なサービスにどう保険を使っていくか考えていくことが重要である。
次に、どういう方向で在宅サービスを伸ばすのか、というと、施設と在宅の究極の選択になってくる。これは、見直し対象の有力なテーマになる。
施設は、在宅より割安感がある。しからば、「在宅を安く自己負担を5%にしてはどうか」という意見がある。しかし、むしろ、ことの本質からいって施設サービスの方の負担を現在よりも高くし、負担できる人は、2割でもいいのではないかという意見もある。そうする、と相対的に在宅の給付が多くなり、割安感が出てくる。
それから、在宅とのバランスということを考えれば、食事の負担の問題、日常生活的な光熱水費などハウジングコストを負担してもらうことも検討する。
施設の方が割安という感覚が誰にもあり、それを放っておいたら、このままでは制度を維持できなくなる。みんなが経済的にそちらへ流れるような仕組みを放っておいて、在宅を進めようというのは無理がある。
在宅を優遇するのではなくて、施設の方を見直し、本来のバランスの取れた制度になるよう見直すということが一番大きな見直しになる。
ただ、負担増ということをやるのは簡単ではない。今回の改正か、次回の改正か、・・・何回かにかけて修正していくことになるであろう。
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