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介護保険の給付対象、見直しがはじまる   (2004.5.7更新)

 厚生労働省は、4月下旬に介護保険の給付費抑制の一つとして給付対象となっている福祉用具の利用基準を設けると発表した。
 発表によれば福祉用具の貸与に関する給付費は、2000年4月の制度発足当時4億円であったが、2003年12月には114億円と28倍になった。
 新規の認定者には、ケアプラン作成時にすぐに福祉用具を組み込む傾向が強いことから、給付が増えることになる。また、利用者自身もクチコミなどで、「月800円程度でベッドが借りられるらしい」と広がり、その旨を伝える利用者もかなりいるようである。
 あげられている不適当な事例としては、「つかまらないで歩けるような要支援の人が、自走式の車いすや電動車いすを借りている」、「つかまらないでお起きあがれるような要支援の人が特殊寝台を借りている」など主に軽度の人のケースが想定されている。
 利用者本位のサービスを謳っている介護保険制度において、この利用基準に強制力はないようであるが、ケアマネジャーがケアプランを作成する際に心理的な抑制が働くことを期待しているようである。しかし、前述したようなモラルハザードに近い認定者がいる以上、その利用希望に当たっては拒否できない現実がある。負担と給付の意識がアンバランスで、保険料を負担している以上は、元をとらなければならないというような損得勘定で利用している人が多いのも現実であろう。
 実際に、ヘルパーが生活援助で散歩の付き添いにいくと、自転車での散歩を希望され、同じく自転車で併走したという信じられないようなケースもある。このように、介護認定そのものにやや不適当なものが散見され、給付抑制のまえに認定のあり方を見直すことが先決ではないのだろうか。
 ドイツのように給付費の原資のすべてが保険料であると、介護認定の申請の約30%程度が認定を却下されるというように、厳しいものとなり保険事故をいかに少なくするかという姿勢が見られる。しかし、公費が原資の半分を占めている日本の介護保険では、利用者の利益を優先するため、認定が甘くなりがちであろう。これが給付費の増大に輪をかけているとなれば、入り口を緩め、後で給付を絞るという騙しのような、いわば塩味のアメを与えていることになり、より損得勘定の意識を持つ利用者が増えるのではないだろうか。いま少し、認定段階から厳格な審査を行い、認定者には十分なサービスを提供する方が誠実な対応になるのではないか。
 軽度の人を多く認定し、サービス内容の薄い「広く、薄い」普遍的な介護保険を今後もめざすのか、認定を厳しくし、「狭く、厚い」限定的な介護保険をめざすのか、または、保険料や自己負担を引き上げ「広く、厚い」介護保険をめざすのか、国民の選択を迫られる日はそう遠くないであろう。
 今年度から本格化する介護保険制度の見直しを注視していきたい。


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