介護保険部会の議論の経過から見える見直しの論点
(2004.6.3更新)
平成15年5月から社会保障審議会の介護保険部会において介護保険制度の見直しについて、議論が重ねられている。先ごろの16年5月まで介護保険の運営状況、保険者のあり方、給付のあり方、サービスの質、負担のあり方、被保険者の範囲、その他の論点などこれまで13回の審議が行われたところである。
被保険者の範囲の拡大
特に被保険者の範囲においては、障害者への対応として「拡大することは極めて慎重であるべき」、「介護保険がまだ安定していない状況で障害者問題の検討は時期尚早」、「障害者を取り込むと地域保険になじまないのではないか」「障害者を介護保険に取り込むと、地方自治体の負担が増えて財政的に負担し得ない」などの否定的な意見が見られる。一方では、「民間に開放された介護サービスの対象となることで、障害者への差別がなくなるのでは」、「年齢や障害別に制度を作るのではなく、支援費制度と介護保険制度は一元すべき」など障害者との統合をすすめる積極的な意見もある。
そのような議論のあるなかで、5月20日付けの朝日新聞の記事によると厚生労働省の改正の骨格案では20歳から39歳も3号被保険者として被保険者に加えると報じている。またその給付対象も現行の高齢者から、障害者や難病、末期がんなど、介護や支援が必要なすべての人に広げるとしている。特段、驚嘆すべき内容ではなく、これまで関係者の間では十分予想されている方向であった。
これで財政状況の安定度が増すか
厚生労働省の審議会資料によると、平成16年度の予算ベースで年間サービス費用は介護保険が6.1兆円、支援費0.7兆円、また利用者数は介護保険の309万人に比べ、支援費は32万人となっている。支援費は費用ベースで約8分の1、利用者ベースで約9分の1の規模である。
3号被保険者(約3500万人で2号被保険者数の約80%)の保険料は2号被保険者の半額程度の徴収と考えられている。被保険者の範囲を広げた増収額は、2号被保険者の保険料約2兆円の半額×80%と単純に計算すると約8,000億円、年齢による算定の標準報酬がやや低いとしても5,000〜6,000億円程度と思われる。この程度の財源を確保しても、障害者等への給付拡大と相殺すれば、財政的にはあまり改善を見込めないと思われる。ここは、とりあえず半額徴収で制度に導入し、しばらくして2号、3号の統一で同じ料率が適用される日もそう遠くないのではないか。行き着くところ、制度の持続可能のため方策としてますます給付を絞り込み、負担をより重く広くという流れは今後も続きそうである。
来年1月の通常国会への法案提出を目指し、今秋取りまとめられる正式案までのあと数か月、いくつか良きサプライズ案が出てくることを審議会へ期待したい。
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